数学の本質について(2019.12記)

本文章は、私が5年前にコソコソと書いていたもので、日の目を浴びずにカビていたものだ。今読み返してみても意外とまとまった文章になっていて読めはした。

折角見つけたので、今回供養がてら公開してみる事とした。

 

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数学の本質について

本文では, 数学におけるそれぞれの分野について, 本質を考えながら学ぶための参考となるメモを記載する. 
分野ごとに本質について考え, ただの公式の丸暗記, 式が作れるようになるだけで, 応用が利かない, または解法に慣れてしまうなどの「いざ使いたいとなったときに使い物にならない数学」を避ける目的がある. 

以下について重視しながら記載していく. 
・どのような経緯・背景から生まれたもので, どのように活用されるべきものなのか
・それは実際の世界でどのような時に使われているのか. 使用事例
・どういったものを求める為のものなのか(大まかなイメージを持つ)

微積
微積分とは, ものごとの過去と未来の状態を計算するために作られた学問である. 
又, 微分積分それぞれについて, 
微分とは, 物事の状態の変化の様子を元に, 今後の様子を予想し, 過去の様子を計算によって求める事ができる. 直線の式の要素は開始位置(切片)と変化率(傾き), 時刻である. この3点をそれぞれ変数として一つの方程式としたものが直線の式y=ax+bであり, x軸に時刻をとると, 開始位置をbとしたx秒後の位置が分かる. 
また, 距離の微分は速度, 速度の微分(距離の二階微分)は加速度である. 
よって, 運動方程式や二次関数のグラフなど, 加速度(平均変化率), 現在位置(y座標切片)が分かっている場合, 未来(x座標)の時点でどのような位置にいるかがわかるのである. 
なお, 微分操作を行うと定数が消える為, その導関数の切片, いわゆる初期地点が無視されることに注意されたし. 

積分
積分法は, その名の通り, 瞬間毎のもののふるまいを分けて考え, 細かく分割したそれらの値を合計したものが指定区間の総量となる事を利用, それらを積み重ねたものを現在の状態として考えるものである. 
時間(x軸)を極限まで0に近づけた時, 傾きによって発生する誤差は無視できるとし, グラフでは長方形とみなす. 長方形を全て合計すると全体の合計値が分かるという仕組みである. 

〇極限
極限については, イプシロン・デルタ論法を併せて参照の事. 
簡潔に表すと, 微積分を使用する上で大前提となる「時間を極限まで無視させる」ための概念の示し合わせである. 

〇数列
計算の規則を見つけることで, ある特定の回数同様の操作を行ったときの状態を表す式を作る事が目的である. 

数学を学ぶとは. (どういう目的で学ぶのか?)
 私からすると, 数学を学ぶという事は, 出された問題が解けるようになるためでも, 誰かに自慢するためでも, 数字と仲良くなるためでもない. 数学を学ぶという事は, 次のような本質があると考える. 

1.論理的思考力を鍛える
2.役立つ何かを作るために数学を用いる

1について
これについてはよく言われているが, 実際に論理的思考力を鍛えるってどういう意味かについて掘り下げたものは多くない. 私は次のような結論とした. 

論理的思考力を鍛えるとは, 問題解決能力を鍛えることと同義である. 

日常で発生する様々な問題を解決する際, 多くの人間は次のステップで解決までもっていく. 

問題にぶつかる
情報を整理して, 何を解決しなければいけないのかを確認する. 
問題解決には何を使えばいいのか, 解決方法を考える. 
具体的な解決プランをつくる
作成したプランを試してみて, 問題なく解決できるか確認する
本当に解決できているか確認する
解決策を示す

これをそのまま数学に当てはめてみると, 次のようになる. 

問題文を読む
与えられた情報を整理し, 最終的な答えとして何を求める必要があるのかを確認する
答えを求めるまでの道筋を確認する
式を作成する
計算する
検算して, 答えが正しいか確認する
答えを示す

このように, 数学の問題を解くことがその実, そのプロセス自体に意味があるのである. 
次に, これはどちらかというと工学よりの考えとなるが. 

2について
 折角頭を使って数学を学んだとしても, 最終的に自己満足で終わってはもったいない. なので, 学んだことを利用して何か便利なものを作ってみよう. そういう考えだ. 
親がこどもに数学を学ぶ意味について説くときは, とりあえずこちらを説明することが多いだろう. (だがその具体的な応用事例をこたえられる親は少ない. )
念のため例を挙げられるか考えてみると, 
まずはコンピュータだ. 最近の量子論を混ぜたものを除き, おおむね二進数が使われている. 
微積分についてだと, 戦争に使用されていた大砲から始まり, 現在だとロケットというところか. 全て弾道学にもとづく発明品だ. 未来が予測できるという事は, 好きな時間に好きな場所に物を移動できるという事だ. 
次にベクトル. こちらは何か発明品というよりは, どちらかというと概念として重宝されている. スカラー(0階のテンソル)に力の向きを追加することがどれほど意味のある事かは想像に難くない. イメージとしては, 家から最寄り駅までどのように行けばいいか説明する際, 「1キロ歩くと着く」といわれるより, 「北に1キロ歩くと着く」といわれる方がいいに決まっている. 力学の自由落下運動方程式を立てる際にも, 重力加速度の向きが定まっていないとエネルギーの足し算が合わなくなる. 
話がそれたが, 他単元についても以下にて考えていくこととする. 

〇場合の数・確率
確率という単元は, 他と比べて少し特殊であり, 計算結果が実際の現象と釣り合わないという要素を含んでいる. だが, 量子力学が確率の学問であるということからも, この世界はミクロの視点で見ると確率で成り立っているといえる. (波動方程式による存在確率密度について参照の事)
数Aで出てくる確率は, どちらかというと統計学に対する準備であり, 後述する統計という単元と密接に関わっている. 
ある現象が何回中何回起こる可能性がある. よってこういう結論となる. のように, リスク管理などにうってつけの考え方である. 
確率を学ぶ上で何を念頭に置けばいいかというと, 今考えようとしている現象にはどれだけの場合の分岐があって, どういった事がどれぐらいの確率で起こりうるのかを洗いざらい上げる力. そして出てきた結果を比較し, 最終的な結論としてどのようにするのが好ましいのかを結論づける. ただ闇雲に選ぶのとは雲泥の差. 説得力が桁違いである. 

三角関数
 三角関数とは, 直角三角形について, 二つの辺が作る角度が分かったとき, その二つの辺の比が分かる. 又, その逆も可能(逆三角関数)という単元である. 
応用例としては, 先に記載した弾道学, 測量, 物体の回転(複素平面微積分を利用), 天体間距離の測定, 角速度の導出, コンピュータゲーム, 合成音声などの波に関する全般(全ての波の現象はサインとコサイン波で記述可能). ざっと上げるとこれくらいだろうか. 正直すべてあげようとしても絶対に書ききれない. それほどこの三角関数という学問はこの世の物理現象のほぼ全てを包括的にカバーしていて, 私たちはただただこれを考案した古代ギリシア人に敬意を表し, 用いるのみである. 何故そんなことができるのか, 重ねて本当に意味が分からない. 
三角関数においてはその名の通り, 常に三角形を使用する. よって基準の線に対して必ず直角になるもう一つの線を使用する. 基準線が必ずあるのである. 当たり前のことであるが, ここの理解が出来ているかが一番重要なのである. 線があるから角度が生まれる. 角度があるから線がある. 
三角関数において, 多くの場合は有名角(30,45,60), 準有名角(15,75)までを使用する. 理由は簡単. 使いやすいからだ. 三角関数においては弧度法が使用される. 円を考えた時, 一周を2(正確には2πr)とする考え方だ. よって三角関数においては2が法となり, 先に上げた有名角などは割り算として分数表記される. これについて, 各辺の比を考える関係で計算結果が常に分数になるため, 好ましかったのだろう. (割り算は比を考える学問であるから)